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2010年1月15日 (金)

父の味噌汁

初雪の舞った日に、句集を頂戴した。
   昭和という熱砂を駆けてきた足だ
   雲の流れを追って転んだことがある
   或る乾き影から先に水を飲む
一句、一句が、凍えたからだに沁みこむ、あったかい飲み物のよう・・・。
   味噌汁がぬるくて金が欲しくなる
あ・・・父の味噌汁だ。
一度だけ、父の味噌汁を飲んだことがある。十歳ごろだったか、母は妹だけを連れて出て、帰って来なかった。朝ごはんに、父がご飯を炊き味噌汁をつくってくれた。父とふたりの食卓は冷え冷えとして、味噌汁は濃くて熱くて・・・あの父の味噌汁。
   木の楽器ばかり鳴らしている家族
   アルバムに戻って来ない春がある
   乾かない傘が黙って置いてある
不器用で口下手だった父のあのお椀一杯の味噌汁に、いまごろ舌を火傷し、胸までいっぱいになる。
   僕の肋ひらくと走る蒼き馬
   狼は往復切手など持たぬ
   落書きもついでに消しておく散歩
             (川柳作家全集「奥山晴生」新葉館出版)
句集をゆっくり閉じて、木枯らしの街へお酒を買いに出た。今夜は、父と飲もう。
  徳利を倒す ふわりと亡父の「おい」  桐子

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