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2010年5月13日 (木)

ゆくりなく

京都のオーガニックレストラン「月庵」は、野菜のおいしさを再発見できる店だ。野菜スープ、焼き野菜・・・、シンプルな調理法でそれぞれの野菜の持つ甘み、苦味、青味などが存分に引き出され、それは大気、水、土、火・・・あらゆる自然を体内に取り込むような感覚さえ憶える。

内田真理子さんの句集「ゆくりなく」を閉じるとき、まさに月庵での「ごちそうさまでした」の気分だった。
奇をてらったようなものでなく、厳選されたことば。ことばの持つ世界を、自然に引き出し、広げ、時空を越えたところにあそばせてくれる。読後、しみじみと、ことばの使い手であることのしあわせを思った。

   てっぺんのうすい空気を奪い合う
   泣き疲れるまでの仔猫を聴いている
   何本も列車の溜まる耳の奥
   向日葵のあらかた焦げている部分
   泣かないと決めてまぶたのないさかな
   襟ぐりをゆるめ三月すべり台
   おずおずと差しだした手にぼたん雪
   くちびるがはみだしてゆく地平線
   ほらここにみんな笑っていた窪み
   やがて手は森に育ってゆくきざし

      (内田真理子句集「ゆくりなく」 あざみエージェント)

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