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2010年9月23日 (木)

キリコさんの失敗

ほんの短いつきあいでも、忘れ得ない人がある。一瞬の触れあいで、人生に大きな影響を及ぼす人もいる。
一人の少女にとってのお手伝いのキリコさんは、まさにそれだ。

小川洋子さんの短編集のなかに出てきた、「キリコさんの失敗」。同じ名前というだけで、心臓が小刻みに震えた。
小川洋子さんは、なにかが欠損した人を書く。失ったがゆえに、気づくこと、得るものを、澄んだ硬水のような筆で書く。
キリコさんは、なにも失ってはいない。少女も。けれど、何かを得ることは、何かを失うことだと、水のあたたかさをもって書かれていた。
私も、誰かのキリコさんであれたら・・・、雨のむこうの満月を見上げて思った夜だった。
          (「偶然の祝福」 小川洋子 角川文庫)

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