« 瓶の口吹いてひとりをひびかせる | トップページ | くちびるのこんなところに魔が潜む »

2010年11月15日 (月)

機嫌のいい犬

作家川上弘美さんの俳句集。
川上さんの句と、福島金一郎さんの挿絵がベストマッチ。句集の紙の色と手触りがとてもいい。本の内側の紙の色(なんていうのかな?)、古代色チックなサーモンピンクも素敵!
好きな句はたくさんあったけれど、中からいかにも川上さんらしい句を10句。

  はっきりしない人ね茄子投げるわよ
  常よりも右に臍ある油照
  くちづけの前どんぐりを拾ひましよ
  いたみやすきものよ春の目玉とは
  草分けておとうと探す春の暮
  春の夜人体模型歩きさう
  行秋のうすく反りたるオブラート
  もの食うて機嫌なほりぬ春の雲
  夏の夜オカリナ吹いてこはくなる
  終点より歩いて十歩冬の海

飄々淡々としたさみしさ、怖さ、妖しさ、うれしさが魅力。
川柳では、“想い”の共感性ということが言われる。その場合、怒、哀は、喜、楽に比べ、想いの強度が強く、さらに想いが強く激しいほど共感性も高まる。著名な柳人の代表句と言われる句にも、そういった句が多いように思う。
しかしながら、川上さんの句のような、何気ない日常の刹那によぎる、薄いさみしさやこわさ、ちいさなよろこび、たのしさを飴玉を転がすように、じんわり味わうのもいいものだ。ドロップの缶からガラガラと取りだすように、あの句、この句・・・。この先、機嫌よく暮らせそうな気がする。

  徹頭徹尾機嫌のいい犬さくらそう  川上弘美

« 瓶の口吹いてひとりをひびかせる | トップページ | くちびるのこんなところに魔が潜む »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 瓶の口吹いてひとりをひびかせる | トップページ | くちびるのこんなところに魔が潜む »

無料ブログはココログ