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2013年11月25日 (月)

雑踏に遠い声ばかり聞こえる

母は佐賀県に妹夫婦と暮らしている。四年前に妹と大喧嘩をして飛び出して来て以来、会っていない。
一度私が博多に用があったときに連絡した。博多までは電車で30分ほどだが、「今、髪を染めてないから・・・」という理由で会いに来てくれなかった。個性的な人なのだ。
それから何度も遊びに来ると言いながら、腰が膝が・・・と実現しなかった。そろそろ会いに行かねばなぁ・・・と、お正月に家族旅行を兼ねて九州へという話しをしていたところだった。

母から電話。「
きりこ・・・」と消え入りそうな声にただ事じゃないと身構える。
9月の終わりから、血圧が不安定になり、1ヶ月ほど通院しながら床に伏していたという。症状が改善しないため、入院させて欲しいと頼んだところ、入れば最後生きては出られないという評判の病院を紹介されて入院。(そこだけは嫌だったが、そこしかないと言われ拒否するだけの気力がなかったらしい)
点滴も何もなく、ベッドで寝るだけ。ほとんど味のない食事。次第に眠れなくなり、死にたくて死にたくて仕方がなくなる。どうせ死ぬなら家の方がいいと思い、退院を申し出て帰宅するも、死に取り付かれてしまったという。
「なんべんも死にたい言うて、Mさん(妹)困らしてん」(余談だが、母は小さいときから私を呼び捨て、妹はMちゃん(Mさん)と呼ぶ)
主治医に心療内科を紹介され「不安神経症」と診断され、なぜかほっとしたのだとか。まだ食欲はないけれど、やっと光が見えたという母に、お正月には行くからゆっくり元気になっててねと、その日は電話を切った。

それから4日後のこと、「モシ、モ~シ」(後ろのモ~にアクセント)と、通常テンションの母から電話。これはこれで身構える。
「あのね、Iさん(近所に住む、母の詩吟の先生で姉のように慕っている方)が、炊き立てのご飯があるからちょっと食べて行ってって言うてくれて、ご飯よばれて、それから食欲が出てきてん。もう、ほんとにIさんは命の恩人やから、もちろん私は感謝の気持ちを伝えてるし、お礼もするけど、桐子からも手紙を書いて何か贈ってちょうだい。住所言うよ・・・」。出た!母の有無を言わせないお願い。伝えきれない感謝の気持ちをどう伝えるか、母なりに知恵を絞ったのだろう・・・気持ちは分かるけど・・・と逡巡していたら。
「手紙には、いい、私は離れていて母に何もしてやれませんが、Iさんが母にほんとうによくしてくださって・・・・・・・・・」。文面まで指示するか!

この通り起伏が激しいのだ、母は。母は自分で、精神的には丈夫だと思っていたのにまさか心を病むとは・・・と驚いていた。
私は腑に落ちる。母(80歳)は、自分が同年代と比較して、心身も見た目も若々しいということに誇りを持っている。老いさらばえる自分は到底受け入れられないのだろう。まったく、強化ガラスみたいな人だから。壊れるときも、周りを傷つけやすい。
さてと、手紙を書かなければいけない・・・。Iさんの重荷にならないように・・・。

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コメント

桐子さん
夢のような話ですが、
何も伝わらないより
余計なことがあっても伝わる方が
ずっといいように思いますが。

政二さん
今年は、「ことば」で失敗の多い年でした。
いえ、失敗は前から多いのですが、
大きな失敗があって・・・。
私を通して出る「ことば」が、なんともこわいです。

わずかでも伝わる・・・。
ほんとうに夢のような話です。


桐子さん
ドラマのようなお話です、
私の母は96歳、
私のことは、顔は覚えがあるようですが、
自分の息子との認識はありません。
確りしているころは、頑固で周りに迷惑もかけていましたが、
今は、とても可愛くなりました。
人は高齢になると90%以上認知症になるようです。

光明さん
息子から可愛いと言ってもらえるお母さん、しあわせ!
96歳、可愛くお元気でいてくださるといいですね。

今日、あるところの選を終えたのですが、
老いや非常事態を受け止めて、ことばにされた句があって
それも、ちょっとユーモアも交えていたり・・・。
川柳の眼って、心の余裕だなって思いました。

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