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2014年11月22日 (土)

もしももしももしものはなし土踏まず

約束の時間より30分も早く着いてしまい、海岸へ出た。
歌うように光を散らす朝の海。その向こうに、ポートタワーが赤く立っている。若々しく見えるけれど、妹と同い年だから51歳だ。

小学校の1、2年生だった。
母が、妹だけを連れて里へ帰ってしまった。父と何かあったのだろう。
そういう状況になったとき、そうなることは薄々予想していた。ただ、現実にそうなるとは思ってもみなかった。
父はやさしかった。けれど、笑っても泣きそうな父の眉が、たまらなかった。父が作ってくれた若布のみそ汁が塩っぱすぎて、こんな日がずっと続くのかと思った。
それから、何日経っただろう。「お母さんが帰って来る」と父が言った。
串カツを作ると言う父を手伝って、パン粉をつけた。母の玉ねぎのフライは、厚さ8ミリほどの半月形なのに、父のそれは、1、5センチほどの満月形。竹串に通すのに難儀をしていた。それだけ、やけに鮮明に覚えている。
父と車で神戸港へ向かった。道は混んでいて、父は苛ついていた。気が急くのか、スピードを上げては、ぎゅっとブレーキを踏み込む。気分が悪くなったが言い出せず、後部座席で横になると眠ってしまった。
「ポートタワーが見えたぞ」。夕暮れの神戸港に着いた。大きな荷物を提げた母と、妹が向こうからやってきた。うれしかった。妹は跳ねるように歩きながら、手を振って笑った。その瞬間、無性に腹が立った。目を逸らした先に、ポートタワーが赤く立ち尽くしていた。

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