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2015年4月 6日 (月)

むさし句集 「亀裂」

  着信のたびに震える防波堤

  この世から少しはみ出ている踵

  柩には櫂を一本入れてくれ

  街路灯点けば泣きたくならないか

  鮟鱇に戻ってしまう夕間暮れ

  戒名の真ん中へんの釘の穴

  優しさが少し斜めに立っている

  手のしわを見ているパンが焦げている

  いい人に会うまで風をためている

  さよならを言わない人の立ち泳ぎ

以前、柳本々々さんが、週刊俳句に「この句集を読んでいてすぐに気がつくことは、<自然>にまつわることばが多い、ということです。そして同時に気付くことは、<自然>が出てくるたびに<身体>にまつわることばが呼び寄せられるということです。」と書かれていた。
句集のあとがきには、句会、大会の題詠がほとんどとあった。たしか作者は写真がお好きで、かなりの腕前とお聞きしたことがある。ファインダー越しに見つめた風景や草花の鮮明な画像は、膨大に記憶されているだろう。その脳内ディスクに、題で検索をかけるようにして句材を掴み、身体のどこかに「亀裂」を作って取り出されているのではないだろうか。実感に即して書かれている、と感じるのだ。題詠を重ねながら編み出された、作者独自の書き方と思う。     (東奥日報社)

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コメント

蓉さんを思い出す。
しんみり切ない。

思い出されて、蓉さんよろこでる!

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