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2015年5月31日 (日)

山崎夫美子句集 「葉桜の坂」

  野に春の言葉溢れて手をつなぐ

  悲しみは分け隔てなく宵桜

  葉桜の坂なら君達の手を離す

  双塔のどちらに傾く雪の夜は

  夕闇も店もたたんで鳥を抱く

  神木の倒れるまでを冬鹿と

  月蝕を待って仏の眼を入れる

  合わせ鏡に蝶閉じ込めている輪廻

  紅葉の激しさひとり溶け残る

  埴輪の眼その空洞に火を焚こう

奈良にお住まいの作者が、日常風景のなかで詠まれた作品。仏師が木から仏を彫り出すように、日常からことばで詩を書き出す。熟練の技を惜しみなく注ぎ、丁寧に磨き上げられた句は、読み返すほどに心に沁み入る。お墓参りの帰り、夕暮れの電車に揺られながら、ふいに「夕闇も店もたたんで鳥を抱く」が胸に落ちた。私は、まぼろしの鳥を抱き、たしかにそのあたたかさを感じていた。わすれられない一句になった。 (新葉館出版)

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