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2016年1月15日 (金)

午後のこと

ケーブルテレビの電波検査の日。1時〜3時の間に来るという。今日中に仕上げたい原稿があるのに、来るまで落ち着かない。待っている間に、すこし腹が立ってくる。2時にやって来たのは、煙草の匂いのぶかぶかのパンツを穿いた男性。電波検査はすぐに終ったが、電話とネットの契約をケーブルテレビに変更するよう勧められる。月々1,000円ほど安くなるので、ほとんどの家が変更したのになぜ変更していないのか?と訊かれる。「面倒だから」と答える。安くなるのに変更しない理由が分からないと言われる。責められているような気持ちになってくる。家族と相談するというと、あなたに決定権はないのかと詰められる。そうだ、このやりとりが面倒なのだ、と思う。家族と相談して断ってもいいから仮登録を…と強く勧めてくる。詰め寄られると逃げ腰になってしまう。もう30分も経っている。昼食後に飲んだ風邪薬が効いてきて眠くなってくる。朝方に見た夢を思い出す。そうだ表彰式だ。受賞者に渡すトロフィーを落としてしまったのだ。壊れはしなかったので平謝りで渡した。すっかり気が動転して凡庸なコメントをしてしまう。そのことで落ち込んでいた…。思い出しても滅入る。男性が数字を書き入れた紙にサインをしたら、オレンジ色の食品用ラップをくれた。それから男性は検査機械の入った鞄をゆっくりゆっくりかたづけた。苛つかせる動作だった。帰ってほしい。ことばをさがす。男性はまだチャックを開いたり閉じたり、鞄の腹を叩いたりしている。ことばが見つからない。服のポケットの一つずつに手を出し入れしてやっと決心したように頷くと、もう一度仮登録の話をした。「しません」と言うと、瞳はスイッチを切ったように暗くなった。「ごくろうさまでした」、水が漏れるように声が出た。

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