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2017年8月 1日 (火)

虫武一俊歌集「羽虫群」批評会

 くだり坂ばっかりだったはずなのにのぼってきたみたいにくるしい

 丁寧に電話を終えて親指は蜜柑の尻に穴をひろげる

 三十歳職歴なしと告げたとき面接官のはるかな吐息

 暗いところは肺を濯いでいくところ澄みきってひとをきよらに嫌う

 十割る三がもののはずみで割り切れてしまって 叫び声がきこえる

 繋ぐっていうよりつかみあいながらお祭りの灯を何度もくぐる

 しんりん、と木々をまとめてゆくような冷たさにいくたびも頬は

生き辛さをかかえる不器用な青年のモノローグのような歌が並ぶ。
私は、虫武さんのことをよく知らなかったが、いわゆる結社に所属する歌人ではなく、雑誌やネットの投稿歌人(?)として注目された方らしい。
パネリストの穂村弘さんは、「外のセンスを短歌に導入している逆輸入感がある」と評された。

歌集を読んだときに、Twitterのつぶやきに似た匂いを感じた。不特定多数の見えない相手に対して、だれかに届いたらいいな……と発信されることば。マイナス感情をストレートに吐き出さず、読み手に不快感や反発を与えないようほのめかすにとどめる感じ。あのどこかポエムな感じ。
虫武さんの歌からは、計算されたようなあざとさは感じられず、もともとご本人の持ち味だと思うし、修辞や構文などの技術もしっかり備えておられる。

結社に属さない歌人は、これからもっと増えるだろう。今回のような批評会やイベントを開催するネットワーク力も見逃せない。今後、どんな風に活動し、どう成長されるのか興味深い。

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